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-(会員シリーズ)過ぎし日を語る - 髙岸秀樹

コクヨとの出会い
髙岸秀樹
広報委員会 副委員長
髙岸秀樹
(コクヨ山陽四国販売(株))

 (一社)香川県建築士事務所協会の先生方々には、平素より大変お世話になり、有難うございます。

 このたび、定年を迎え退職することになり、ご迷惑を掛けてばかりだったのですが、会誌『さぬき』に掲載の依頼を頂戴いたしましたので、ほんの少しの御時間を頂けますでしょうか?

 私髙岸秀樹は、前々の社名『(株)北四国コクヨ』に、1977年の20歳の時に入社いたしました。
 坂出工業高校を卒業して、坂出のとある造船に関わる会社に就職し、会社の費用負担で、川崎製鉄下請企業の職業訓練校のある岡山に、転勤を命じられました。職業訓練校を卒業したころに、「香川に帰れますか?」と上司に聞いたところ、「う・・・・ん」と首を傾げられたのです。それを期に、香川に帰ることにしました。当時は、長男が家を継ぐのが当たり前、という風習を真剣に思っていましたので。
 香川での職探しは職安で【トラック運転手助手】という職種の中に、『(株)北四国コクヨ』があり、体力には自信があったので面接の手続きをして頂きました。私の当時は、コクヨといえば、Campusノートという代名詞的なノートがあり文具の会社と思い込んでいました。なので文具製品を各販売店様に、日々、トラックで配達するのだろうと思っていました。採用して頂き、仕事に従事しますと、机・椅子・書庫などを組立て、お客様の事務所に設置していく内容でした。コクヨってスチール家具を売っているんだと、軽いカルチャーショックを受けました。
 コクヨの創業者:黒田善太郎が、明治38年に『黒田表紙店』を開業し、その後『黒田国光堂』と改め大正6年に、商標を『国誉』としました。くにのほまれ『国誉』が現在の『コクヨ』となっています。
 当初は、和帳であったり、洋式帳簿が主流製品でしたが、昭和35年よりスチール家具の製造に着手し業績を上げていき、現在では、売上高3,076億円(2016年)となっています。

img-01-002.jpg  話は戻って、入社当時は物流部門でいましたが、消費税導入前の1989年の3月は、駆け込み需要で毎晩1時、2時までの残業をしていました。当時は、ブラック企業という単語があったか、どうかはわかりませんが、同僚と苦しいけど楽しく日々の仕事をこなしていました。

img-01-003.jpg  その後、営業の先輩が一身上の都合での退職が決まり、1名欠員がでたので、営業部への配属となりました。当初はルート営業:担当エリアの販売店様への御用聞き的な営業で、毎日を気楽に過ごしていましたが、6年程経過後、特販部への配属になりました。
 この特販部は、設計事務所様へのスペックインとゼネコン様の組下工事、官公庁様への営業等々の活動内容となり、ルート営業では味わなかった苦労を味わう毎日となったのです。
 我々の業界で、1案件何億円となると超大型案件だと思いますが、忘れたくても忘れない案件が3件あります。
 ①:香川県立保健医療大学(現名)
   組下工事・施主発注合計 約2億越え
 ②:高松シンボルタワー(現名)
   組下工事・施主発注合計 約4億越え
 ③:三豊市市町村合併
   【金額でなく苦労した案件】
   ≪オフィス移転コンサルティング業務≫
   香川県内で弊社初のコンサルティング業務

 上記の3件は、胃に穴が開いたり、ストレスで手が震えだした案件です。それでも何とか完了したのも下記の黒田善太郎の教えがあったからだと思います。

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経営の信條
 人は無一文でこの世に生をうけ父母の恵み、恩師の導き、社会のおかげによって心身ともに成長し、やがて社会に出て一つの仕事をあたえられる。それは天より授けられた天職である。天職には貴賤の別なく、人が生ある限り自らの全力をつくして全うせねばならぬ。天職を全うするには人の信を得ることが最も大切である。人に信を得る最善の道は、自ら誠をもって実行することである。真心をもって買い、造り、そして売れば、人おのずから信用し、人に信用を受ければ天職はおのずから全うしうる。誠心誠意不言実行――これが私の経営の信條である。

 この経営の信條の中に、『天職』という言葉がありますが、私にとって「この仕事が天職だったのかなあ」と、退職する日が近づいて気がつきました。
 リタイア後の就職先でも、『天職』だと思えるように楽しく仕事が出来ればなと、考えております。

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瀬戸内国際芸術祭に参加して

野村 正人
野村 正人
野村正人建築研究所

img-01-002.jpg 瀬戸内国際芸術祭は3回開催され、世界にも広く知られる芸術祭となりました。第1回瀬戸内国際芸術祭は高松市沖の島を中心とした芸術祭としてスタートしましたが、私はその時は善通寺と中心に設計活動をしていまして鑑賞者として小豆島、直島の作品を訪ねて参りました。その時感じたことは、地域芸術はフランスなどでエコミュージアムなどがあることは知っていましたが感動の連続でした。第2回の2013年からの芸術祭は中讃、西讃エリアに広がることが発表されました。その時はすでに高松で設計活動を始めておりましたが、一般公募で瀬戸芸に応募しました。東京の坂倉事務所での修行の後、郷里の善通寺に帰郷して以来瀬戸内海の島々を巡っていました。その当時からヨーロッパの地中海より素晴らしいと語っていました。

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 特に高見島の浦集落の斜面は男木島より急斜面で、独特の景観を生み出しています。つまりどの家からも海を臨むことが出来る集落があり、高見島を選び「島時間プロジェクト」というタイトルで応募しました。また高見島は過去には1400人の人口でしたが、今や30人まで減少しています。なんとか人口減少を食い止めようとしてのまちづくりがテーマでした。しかし一般応募者の新聞発表は遅く、私共のチームは無理かと諦めていました。ある日の夕方、突然北川フラム氏から直接私の事務所に電話がかかって「君の応募作品を瀬戸芸に採用するから今すぐ事務局に来るように」との指示があり、息子や関係者に声を掛け夜9:00に面談に参りました。緊張の余り内容は余り覚えていませんが、とにかく北川フラム氏のお褒めの言葉があり、喜びの気持ちいっぱいでエレベーターまでフラム氏に見送られ解散したことを思い出します。その時の応募者数は700件以上ありそのうち採用は20件で35倍の確率だったようです。その後何回かの打合せの中でタイトルを絞り込み、「海のテラス」が決まりました。高見島の浦地区の高台の古民家の前庭をテラスに改修して、イタリア料理を提供する食プログラムとして決定されました。フラム氏のいわゆる食も芸術であるという理論にもとづくものです。

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 計画案が決定され、いよいよ制作段階に入りましたが、まずはテラスになる処や庭になる処のツタやバラそして雑木を切出し処分に3か月掛け、すでに秋開催なのに4月になっていたと思います、そうこうするうちにアートフロントが視察に来られ発破を掛けられ、作業をスピードアップしました。こえび隊、地元の応援団、プロの大工にも入ってもらい、少しずつ目標が見えてきました。テラスや鏡を使ったアート、離れの改修が終わりのころにはメディア(新聞、テレビ)にも紹介されました。いよいよ10月8日の開会式の後は、浜田県知事、福武惣一プロデューサー、北川ディレクターその他国会議員、県会議員が海の見える離れでイタリアンを楽しんで頂き、評価も高い中スタートを切ることが出来ました。会期中は多くの人々が訪れ約300食/日の食事が出て長い行列が出来る状況が続きました。会期の後半に北川フラム氏が高見島に来られ「海のテラス」を継続事業にするがどうだろうか?との問いが有り快く受けました。2014年にはアートセトウチがあり、FM香川主催の高見島再生プロジェクトがありました。
 2016年、第3回瀬戸芸は運営も島の人々や香川短大の学生、地元のお母さんの力など自力で運営して本来の瀬戸内国際芸術祭の主旨に近い形を取ることに決め、トマト、ジャガイモなど島で取れる食材は島のおばあちゃんに畑をお借りして生産しました。

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 ただ、食プログラムという技術を要する内容ですので中野誠司氏(ケータリングシェフでフラム塾卒業生)の指導を頂いた。今回の改修は集落に向けての開口を作りその窓にテーブルを取りそこで食事を楽しむコーナーを制作しました。

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 現在、2019年の瀬戸芸の準備が始まりましたが「海のテラス」の民家を売り出すことになり会場移転する予定です。こうして瀬戸芸に2回参加しましたが、まちおこしの難しさを実感しました、島の人々との付き合いをしてみて不便なところだからこそ見えてくるものが有り、島に通うことより島がかつて伝建に選ばれた集落の魅力が理解出来てきたように思います。そして高見島の街おこしを建築設計活動と共にライフワークとしていくことを考えています。そして私事になるかもしれませんが、現代アートの力で北海道の室蘭のまちおこしを市長に声を掛け、昨年は北川フラム氏の講演を開きました。今後瀬戸芸に参加した経験を生かしまちおこしの手掛りとしたいと考えています。


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