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瀬戸内国際芸術祭に参加して

野村 正人
野村 正人
野村正人建築研究所

img-01-002.jpg 瀬戸内国際芸術祭は3回開催され、世界にも広く知られる芸術祭となりました。第1回瀬戸内国際芸術祭は高松市沖の島を中心とした芸術祭としてスタートしましたが、私はその時は善通寺と中心に設計活動をしていまして鑑賞者として小豆島、直島の作品を訪ねて参りました。その時感じたことは、地域芸術はフランスなどでエコミュージアムなどがあることは知っていましたが感動の連続でした。第2回の2013年からの芸術祭は中讃、西讃エリアに広がることが発表されました。その時はすでに高松で設計活動を始めておりましたが、一般公募で瀬戸芸に応募しました。東京の坂倉事務所での修行の後、郷里の善通寺に帰郷して以来瀬戸内海の島々を巡っていました。その当時からヨーロッパの地中海より素晴らしいと語っていました。

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 特に高見島の浦集落の斜面は男木島より急斜面で、独特の景観を生み出しています。つまりどの家からも海を臨むことが出来る集落があり、高見島を選び「島時間プロジェクト」というタイトルで応募しました。また高見島は過去には1400人の人口でしたが、今や30人まで減少しています。なんとか人口減少を食い止めようとしてのまちづくりがテーマでした。しかし一般応募者の新聞発表は遅く、私共のチームは無理かと諦めていました。ある日の夕方、突然北川フラム氏から直接私の事務所に電話がかかって「君の応募作品を瀬戸芸に採用するから今すぐ事務局に来るように」との指示があり、息子や関係者に声を掛け夜9:00に面談に参りました。緊張の余り内容は余り覚えていませんが、とにかく北川フラム氏のお褒めの言葉があり、喜びの気持ちいっぱいでエレベーターまでフラム氏に見送られ解散したことを思い出します。その時の応募者数は700件以上ありそのうち採用は20件で35倍の確率だったようです。その後何回かの打合せの中でタイトルを絞り込み、「海のテラス」が決まりました。高見島の浦地区の高台の古民家の前庭をテラスに改修して、イタリア料理を提供する食プログラムとして決定されました。フラム氏のいわゆる食も芸術であるという理論にもとづくものです。

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 計画案が決定され、いよいよ制作段階に入りましたが、まずはテラスになる処や庭になる処のツタやバラそして雑木を切出し処分に3か月掛け、すでに秋開催なのに4月になっていたと思います、そうこうするうちにアートフロントが視察に来られ発破を掛けられ、作業をスピードアップしました。こえび隊、地元の応援団、プロの大工にも入ってもらい、少しずつ目標が見えてきました。テラスや鏡を使ったアート、離れの改修が終わりのころにはメディア(新聞、テレビ)にも紹介されました。いよいよ10月8日の開会式の後は、浜田県知事、福武惣一プロデューサー、北川ディレクターその他国会議員、県会議員が海の見える離れでイタリアンを楽しんで頂き、評価も高い中スタートを切ることが出来ました。会期中は多くの人々が訪れ約300食/日の食事が出て長い行列が出来る状況が続きました。会期の後半に北川フラム氏が高見島に来られ「海のテラス」を継続事業にするがどうだろうか?との問いが有り快く受けました。2014年にはアートセトウチがあり、FM香川主催の高見島再生プロジェクトがありました。
 2016年、第3回瀬戸芸は運営も島の人々や香川短大の学生、地元のお母さんの力など自力で運営して本来の瀬戸内国際芸術祭の主旨に近い形を取ることに決め、トマト、ジャガイモなど島で取れる食材は島のおばあちゃんに畑をお借りして生産しました。

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 ただ、食プログラムという技術を要する内容ですので中野誠司氏(ケータリングシェフでフラム塾卒業生)の指導を頂いた。今回の改修は集落に向けての開口を作りその窓にテーブルを取りそこで食事を楽しむコーナーを制作しました。

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 現在、2019年の瀬戸芸の準備が始まりましたが「海のテラス」の民家を売り出すことになり会場移転する予定です。こうして瀬戸芸に2回参加しましたが、まちおこしの難しさを実感しました、島の人々との付き合いをしてみて不便なところだからこそ見えてくるものが有り、島に通うことより島がかつて伝建に選ばれた集落の魅力が理解出来てきたように思います。そして高見島の街おこしを建築設計活動と共にライフワークとしていくことを考えています。そして私事になるかもしれませんが、現代アートの力で北海道の室蘭のまちおこしを市長に声を掛け、昨年は北川フラム氏の講演を開きました。今後瀬戸芸に参加した経験を生かしまちおこしの手掛りとしたいと考えています。


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この記事について

このページは、sekkei-kagawaが2018年7月27日 10:38に書いた記事です。

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