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一(会員シリーズ)過ぎし日を語る--小 竹 義 孝


(会員シリーズ)過ぎし日を語る---

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小竹興業㈱会長

 小 竹 義 孝

 

 私が学生生活に終わりを告げ、社会に第一歩を踏み出したのは、昭和38年、東京オリンピックが開催される前の年でした。 新幹線も整備され、首都圏では地下鉄や高速道路が次々と拡張され、高層ビルも立ち並び、建設業界は、正に、高度成長時代の先端を行く業種として、最盛期の年でした。建設業界では、特に、公共工事において、庁舎、町村役場、学校などが、木造から、鉄筋コンクリート造に建て替える時期でして、当時は、「生コン」も無く、「ポンプ車」も無く、現場練りのコンクリートを「タワー」を建て、「ウインチ」にて吊り上げ、「カート」車にて打設し、躯体を築き上げていく時代でした。仕上げの仕様に関しては、サッシはスチールOP、外壁はモルタル塗リシン吹き付け、内壁はモルタル鏝押さえVP、床はモルタル鏝磨きPタイル貼り、というのが、一般的な仕上げで、左官工事が、建物の精度良否を判定する大きな要因を占めていました。


 私の卒業論文は、「左官工事における人間工学的研究」というテーマでした。建築工事も、昨今では、仕様が大きく変わり、左官の作業量も少なくなりました。外壁はカーテンウォール、内壁は軽鉄下地のボード張り、天井は軽鉄下地のボード張り、床はOAフロアー等、「左官工」の出る幕はほとんどありません。私が、この業界に入ったその当時は、壁、天井、床など、内装の仕上げの精度は、左官工の技能に大きく圧し掛かり、いかに、職人がその技能を発揮し、粘度の良い、きちっとした、いい仕事をするかによって、建物の良否が評価されたものでした。左官工は、経験と器用さが必要な大変難しい業種ですが、特にその作業は全身を使って作業する過酷な重労働です。人間の人体機能には、それぞれ限界があり、首はここまでしか曲がらない、手首もこれ以上曲がらない限界角度があり、腕、腰、足などそれぞれ、これ以上曲げられない限界があります。「左官工」の職人は毎日、この体を駆使して作業をしています。「左官工」の一連の作業の流れを調査する為、当時私は約一ヶ月の間、人手業者の作業現場に入れてもらい、「左官工」が壁にモルタルを塗る作業、床を鏝押さえする作業、また天井にプラスターを塗る作業、等を毎日毎日ビデオに収録し、例えば左官が壁にモルタルを塗る場合、鏝を持った手首の角度はどの角度が最もも無理が無く、効率よく作業しているか、床を押さえる場合は腰の角度は、どの位置が長く継続できるか、梁下プラスターを上向きで作業する場合、腕の角度はどの角度が一番効率が良い動きなのかなどムダ、ムリ、ムラの無い動きを分析し、作業効率、精度、持続性を高める為の資料を作成しました。何とかレポートをまとめ、卒業することが出来ました。


 その後、左官工事における実技の冊子に取り上げられ、「日本左官業組合連合会」の技能講習会の資料として、左官上を目指す若者に利用され、技能向上に貢献したと聞きました。
 IT情報化社会の今日、建築業界もこの半世紀の問に大きく変遷し、建物は軽装化され免震構造、超高層へと技能よりもIT技術の時代になってまいりました。しかし、いつの時代になっても、建築の造形の本髄は、大工や左官など技能の集大成であり、継承していかなければならないと思う

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この記事について

このページは、sekkei-kagawaが2010年6月 6日 17:06に書いた記事です。

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