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ものごとの真理を考える旅

ものごとの真理を考える旅

大 北 和 則
 ㈲住空間設計
 

 
 今から約10年前にその旅は始まりました。独立して間もない頃でしょうか。本誌掲載の寺院建築の依頼があってから私の奮闘は始りました。
そもそも宗教とは全く縁がないものとして、自分の力の足りなさを実感しながら不安と焦りのスタートでした。そうは言っても縁あって依頼されたこと自体、選らばれのだと勝手に自分の気持ちを鼓舞させ、その当時から長丁場であることへの覚悟を決めました。

 だれでもがそうであるように、分からなければ聞くまでのこと、まず最初にしたのが仏門におられる方の法話を聞くことから始めました。それは真言宗にとらわれず宗派の違う方からのお話を聞くこともしました。そのことで宗教の奥深さと自分のやるべき方向が漠然にも見いだせたと思っています。
 とはいえ具体的にどんな形を考えるか、それは過去の建築物に頼るしかありませんでした。年に一回しか開帳していない国宝とか、それに匹敵する建造物を丹念に調べました。霊場を回ったりもしました。宗教的な教義と造形美を考え、最初に形を出せたのは依頼されてから約2年が経っていました。当初から仏教の教義を形にするということが目標であったためにかけた時間でした。
 この一連の作業では中国にも渡っています。弘法大師が渡った中国という視点で体験するということ、中国産の石材を検証するということが主な目的でした。このことによって自分の力の足りなさとか、綿密な造形に対する執着とか感じていた不安感は融けていきました。中国の大陸的な風土とかそのバイタリティー溢れる人間性に仕事を通して触れることによって、自分が想像できる世界のその上に別の世界があって、それを一瞬でも感じた時に自分は動かされるということを実感しました。中国での出来事が現在も自分に影響を与えていることを実感します。
 
 10年もかけても良いという仕事はそう滅多にあるものではないと思います。諸般の事情があったにせよ、自分に与えられた最大の機会であることへの感謝は忘れることができません。今回の仕事を通して得たものは地味ではありますが、人間の心の根幹にかかわる卓越した世界観と、その仕事を通して得られた人々との縁であったと確信しています。お世話になった方々に改めてお礼を申し上げます。
 

2010年第41号 寄稿


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